ファシズムの心理学 ~権威に従うということ~ 第2編

社会心理学

アッシュの同調実験

時計の針はアイヒマン裁判から10年戻って、1951年。

ソロモン・アッシュというゲシュタルト心理学者が、アッシュの同調実験というものを行いました。

以下の様なものです。

こちらの2枚のカードを見せて、左側のカードの線と同じ長さの線はA~Cのどれかと質問します。

正解は明らかにCです。

しかし、アッシュはここで、実験室に、被験者1人の他に、サクラ7人を集めました。

そして、まずサクラ7人に、A(またはB)と答えさせます。

そして、最後に本当の被験者に、どれが正解か尋ねます。

結果は… …

被験者の75%が、少なくとも一度は同調し、サクラと同じ答えをしました。

集団の圧力に負けた訳です。

ついでに、その後の文化心理学的比較実験で、やはりと言いますか、日本人は特に同調しやすいことが明らかになっています。

ミルグラム実験

アッシュの弟子のミルグラムは、アーレント曰く、「普通の人」だったアイヒマンが何故あの様な非人道的な行為が出来たのかという疑問を検証し、人はどれほど権威に従属するのかを調べるため、ミルグラム実験(別名アイヒマン実験)という実験を行いました。

まず、こちらの新聞広告で「記憶と学習に関する実験」と称して、120~50歳の男性を対象に、時給4ドルで被験者を募集しました。

その中で、前科者などを除いて、最終的にミルグラムが勤めていた大学であるイェール大学の学生達が、被験者に選ばれました。

さて、被験者達がミルグラムの研究室に入ると、電気椅子2が置いてあります。

そこで、まずくじ引きを行い、被験者を生徒役と教師役に分けます。

ただし、このくじは仕組まれており、生徒役になるのは全てサクラです。(運が悪ければ自分も生徒役になっていたかもしれないと思わせるための措置。)

次に、教師役の被験者はお試しとして、電気椅子で45ボルトの電流を体感します。

それから教師役と生徒役は別室に連れていかれ、お互いの姿は見えず、インターホンで声が聞こえるだけになります。

そこで、以下の様な実験を行うと説明されます。

  • 生徒役に単語に関する問題を出す。
  • 生徒役が正解すれば、次の問題に移る。
  • 生徒役が間違えれば、最初15ボルト、その後1回の間違いごとに15ボルトずつ電圧を上げて生徒役に電流を流す。

その際、用いられた実験装置がこちらです。

実際には、生徒役は演技するだけで電流は流れませんが、イェール大学 で、この装置って、まあ信じちゃうでしょう?

電気のスイッチには、以下のような言葉が記されています。

  1. 15ボルト“BLIGHT SHOCK”(軽い衝撃)
  2. 75ボルト“MODERATE SHOCK”(中度の衝撃)
  3. 135ボルト“STRONG SHOCK”(強い衝撃)
  4. 195ボルト“VERY STRONG SHOCK”(かなり強い衝撃)
  5. 255ボルト“INTENSE SHOCK”(激しい衝撃)
  6. 315ボルト“EXTREME INTENSITY SHOCK”(はなはだしく激しい衝撃)
  7. 375ボルト“DANGER SEVERE SHOCK”(危険で苛烈な衝撃)
  8. 435ボルト
  9. 450ボルト

最大の450ボルト及び、435ボルトには何も書かれていません。危険を超えた強さという訳です。

インターホンからは、電圧ごとに生徒役のサクラの、以下の様な声が聞こえてきます。

  1. 75ボルトになると、不快感をつぶやく。
  2. 120ボルトになると、大声で苦痛を訴える。
  3. 135ボルトになると、うめき声をあげる。
  4. 150ボルトになると、絶叫する。
  5. 180ボルトになると、「痛くてたまらない」と叫ぶ。
  6. 270ボルトになると、苦悶の金切声を上げる。
  7. 300ボルトになると、壁を叩いて実験中止を求める。
  8. 315ボルトになると、壁を叩いて実験を降りると叫ぶ。
  9. 330ボルトになると、無反応になる。

教師役の被験者が実験をやめたいというと、白衣を着た博士らしき男が、感情を乱さない超然とした態度で、以下のように通告します。

  1. 続行してください。
  2. この実験は、あなたに続行していただかなくてはいけません。
  3. あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです。
  4. 迷うことはありません、あなたは続けるべきです。

4度目の通告後も、被験者が実験をやめたいと言うと、そこで実験は中止されることになっていました。そうで無ければ、最高電圧の450ボルトを3度押すまで続けられます。

さあ、最高電圧まで行く人はどれくらいいると思いますか?

実は、実験前に、イェール大学 で心理学を専攻している4年生14人を対象に、どれだけの割合が最高電圧まで続行するか予想するアンケートが行われ、平均1.2%という結果でした。

さあ、実際の結果はこちら。

  • 300ボルト……12.5%
  • 315ボルト……10%
  • 330ボルト……5%
  • 345ボルト……2.5%
  • 360ボルト……2.5%
  • 375ボルト……2.5%
  • 450ボルト……65%

何と、被験者の約3分の2が、最高電圧まで続行したのです。

これを見て、ミルグラムは、イェール大学の学生は、頭はいいかもしれないけど、なんて非人道的なんだと頭を抱えたらしいですが、後に、それは間違いだと分かりました。

被験者の年齢や性別を変えても、大体約3分の2が、最高電圧まで続行したのです。

その後、生徒役のサクラの様子を見えるようにし、声だけでなく様子も見られるようにして実験を行ったりしましたが、結果は殆ど変わりませんでした。

つまり、多くの人は、一定の環境が整うと、非人道的な命令に従ってしまうのです。

その理由は、一つしか考えられません。実験者が権威だからです。

次回に続きます。

  1. 現在は、このように騙して被験者を募集することは禁止されています。
  2. アメリカの一部の州で、死刑執行に使われています。

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